地震や台風、いざという時の危機管理を考える

令和6年能登半島地震、4月3日に台湾東部で起きたマグニチュード7.2の地震とそれによる津波、毎年大きな被害を出す台風。今なお影響を及ぼす新型コロナウイルス感染症。
果たしてこれら予測のできない事象への危機管理はどれほどできているでしょうか。

こんにちは、ファイブスターコーポレーションです。
今回は自然災害時やテロ発生時など、不測の事態に対する危機管理について考えることをテーマに記事を書かせていただきます。ホテルなど宿泊施設を運営する上でぜひとも当事者として受け止めていただき、お客様が安心して宿泊できる、信頼のおける施設を目指しませんか。

はじめに

先にも述べました大震災や世界各地での紛争など、今年に入っただけでも世界で様々な自然災害や紛争による被害が生じております。
災害により被災された皆様ならび地域に心よりお見舞い申し上げるとともに、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

これら地震や紛争、あるいは台風や疫病、テロなど、不測の事態にいかに行動するか。
施設や地域、県、国といった大小さまざまな単位で危機管理が求められ、考えられています。
とりわけ観光事業者にとっての危機管理を観光危機管理と呼ぶこともございます。
今回の記事では国や県が考える観光危機管理について、そして非常時に私たちに何ができるかについて考えたいと思います。

【1】観光危機管理とは

日本の観光庁では観光危機管理を、「観光客や観光産業に甚大な負の影響をもたらす観光危機を予め想定し、被害を最小化するための減災対策を行い、観光危機発生時における観光客への情報発信、避難誘導・安全確保、帰宅困難者対策等を予め計画・訓練し、危機発生時にはそれに基づく迅速な対応を的確に行うとともに、観光危機の風評対策、観光産業の早期復興、事業継続支援等を組織的に行うこと」<高松正人(2018年).観光危機管理ハンドブックより>、すなわち「災害対応等に関する観光行政・観光産業の備え」と定義しています。

わたくしなりに分かりやすくまとめると、

  • 自然災害や疫病、紛争などの観光危機をあらかじめ予測し、
  • 観光危機による観光業界や観光客への直接的・間接的被害を予測し、
  • それらによる被害を抑えるための対策を考え、
  • 考えた対策を訓練・発信し、
  • 実際に危機に瀕した際に対策を実行する。

ということと考えられます。


表:観光産業に大きな影響を与えた危機 JTB総合研究所の「考えるプロジェクト」より参照

【2】沖縄県の観光危機管理計画

沖縄県では今なお影響を与えている「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」や、2023年8月に1週間にわたり県内に影響を及ぼした台風6号、記憶をたどると2001年のアメリカ同時多発テロ事件発生時の風評被害など、これまで何度も観光危機に直面した過去があります。

それでは沖縄県の定義する観光危機管理をみてみます。
沖縄県でも上記の観光庁が定義するのと同様の内容を掲げ、その目的を「本県のリーディング産業である観光産業は、地域経済の活性化や県民の雇用創出など、県経済に大きく貢献する重要な産業であり、観光産業の持続的発展を図ることは沖縄県の振興・発展にとって重要な施策となります。体制を整備することにより、安全・安心で快適な観光地としての沖縄観光ブランドを構築し、『世界から選ばれる持続可能な観光地の形成』を図ることを目的としています。」としています。<第2次沖縄県観光危機管理計画より>

沖縄県を訪れた観光客を護るだけでなく、県のリーディング産業である観光業界を護ることが掲げられ、そのためには県や国だけでなく、私たち観光産業従事者の取り組みも必要不可欠になってくるのです。

その対策として、平常時の減災対策(Reduction)、危機対応への準備(Readiness)、危機への対応(Response)、危機からの回復(Recovery)という4Rの段階に分けそれぞれ具体的な対策が考えられています。


沖縄県観光危機管理基本計画より参照

【3】宿泊施設ができること

では具体的に、私たちには何ができるでしょうか。先ほどの4Rの段階でそれぞれ考えてみましょう。
・Reduction:平常時の減災対策
こちらはあらかじめ危機を予測し、被害を抑えるために普段から備える対策となります。
<考えられる対策例>
・緊急時伝達体制の整備 ・建物の耐震化促進 ・老朽化が進む箇所の改修
・避難誘導標識の掲示 ・防災マップの掲示 ・多言語対応 ・消防設備点検の他独自の定期点検
・Readiness:危機対応への準備
こちらは危機に瀕した際に行う対応をあらかじめ準備する対策となります。
<考えられる対策例>
・避難訓練の実施 ・避難マニュアル作成(社員向け) ・避難マニュアル作成(お客様向け)
・資機材、食料、飲料水などの確保・備蓄
・Response:危機への対応
こちらは危機発生時に宿泊客への被害や影響を低減するための対策となります。
<考えられる対策例>
・危機管理体制の設立 ・迅速かつ確実な情報の収集、発信 ・避難誘導、安否確認
・待機場所提供 ・交通情報提供/帰宅支援 ・営業/休業判断
・Recovery:危機からの回復
こちらは危機後の早期復興、事業継続に向けた対策となります。
<考えられる対策例>
・官民一体となった連携(情報収集・情報発信) ・プロモーションの実施
・保険金請求 ・復旧工事発注 ・従業員雇用対策 ・観光復興マーケティング ・復旧状況情報発信

これらここで上げさせていただいた内容には施設ですぐに対応が可能なもの、予算組みや情報収集など時間を要するもの、地域や官公庁との連携が必要なものなどと様々ございます。
しかしいつ危機が発生するか予測できない中、対策を行うに早すぎるということはございません。どうぞ今一度考える機会を持たれてはいかがでしょうか。

  

<非常用持出袋:食料や飲料水などの備蓄に> <観光危機管理チェックリスト>

【4】参考文献

今回紹介しました内容の詳細は、以下の各リンク先から確認ができますので是非参考にされてください。
何から調べてよいか悩まれた場合には一つ目のリンクの沖縄観光危機管理サイトをご覧になられることをお勧めいたします。

・沖縄観光危機管理公式サイト
https://tcm.ocvb.or.jp/
沖縄観光コンベンションビューローが提供する沖縄観光危機管理公式サイトです。様々なマニュアルやセミナーなどの動画コンテンツも提供されています。

・沖縄県観光危機管理基本計画
https://www.pref.okinawa.jp/shigoto/kankotokusan/1011671/1011741/1022413/1011871.html
観光危機管理の基本的な対応等を定め、観光客の安全・安心が守られる観光地の形成を図ることを目的に沖縄県が策定した基本計画です。

・外国人旅行者向け用語集と非常時対応マニュアル
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000339.html
外国人にも伝わる情報発信の仕方やマニュアル、フォーマットなどが提供されています。

・ハザードマップポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/
身の回りの災害リスクや地域のハザードマップを確認し、日々のリスクや避難所などを調べることができます。

【5】さいごに

さて、今回は万が一に備える観光危機管理について考える記事とさせていただきました。時に、備えあれど憂いありとなってしまう未曾有の災害ですが、その被害を少しでも抑えることは今回挙げさせていただいたようにいくつもあります。この記事をご覧になり、今一度社内体制の確認や危機管理について考える機会としていただけましたら幸いです。

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