国別インバウンドデータで読む — どの市場に・どのOTAで訴求すべきか

こんにちは。ファイブスターコーポレーションです。
コロナ禍以降、訪日外国人数の回復が加速する中で、沖縄への関心が高まっています。しかし、「インバウンドを強化したい」と思っても、どの国の旅行者に、どのチャネルで訴求すべきか、判断に迷う宿泊施設も多いのではないでしょうか。
市場ごとに利用するOTAは大きく異なり、闇雲に媒体を増やしても効果は限定的です。大切なのは、国別のデータを読み解き、市場の特性に合った戦略を立てること。
本記事では、沖縄のインバウンドデータをもとに、各市場の特徴と効果的なOTA活用のポイントを解説します。

【1】沖縄のインバウンドは急回復中

令和7年度の外国人観光客数は前年比128.4%の294万1,300人となり、コロナ禍前(平成30年度)の98%まで回復しています。出典:沖縄県公式ホームページ(令和7年度 沖縄県入域観光客統計概況)

令和7年度は航空路線において、那覇~清州(韓国)線、那覇~シンガポール線、那覇~台南線、石垣~仁川線が新規就航しました。
令和8年度は、チャイナエアラインより那覇~台中線、ジンエアーより下地島~釜山線(4/2~)の新規就航のほか、石垣~仁川線、下地島~仁川線、那覇~シンガポール線、那覇~高雄線の増便が予定されています。
このように、外国から沖縄に訪れるための路線が近年積極的に整備されており、令和8年度はより多くの外国人観光客が訪れる見込みとなっています。
インバウンド需要が急速に上がる中、今がOTA強化の絶好のタイミングといえるでしょう。

なお、2025年、那覇港には計205隻の国際クルーズ客船が寄港しており、コロナ禍前(2019年)の78.8%まで回復しています。2026年は、2026年6月5日時点で230隻以上の国際クルーズ船が寄港予定となっています。
出典:
那覇港管理組合統計
那覇港管理組合クルーズ船寄港予約管理システム

【2】沖縄に来る外国人は市場によってOTAが全然違う!

沖縄のインバウンド市場は近年急速に回復し、沖縄県の集計によれば、台湾・韓国・香港・中国・アメリカの5ヵ国・地域で外国人来訪者全体の90%以上を占めており、市場の偏りが非常に大きいエリアと言えます。出典:【概要版】 外国人観光客 行動歴分析レポート 2025 年

ここで多くのホテル・宿泊事業者が見落としがちなのが、「国・地域によって使われるOTA(オンライン旅行予約サイト)が全く違う」という事実です。日本人が「じゃらん」「楽天トラベル」を使うように、各国の旅行者にはそれぞれ「定番」のOTAが存在します。市場が偏る沖縄では、ターゲットに合ったOTA選びが集客効率を大きく左右します。

2-1市場ごとに異なる「勝てるOTA」

台湾・韓国・香港:AgodaとBooking.comが主要チャネル
楽天インサイトが2023年6月にアジア各国・地域で実施したOTA利用率調査によると、香港ではAgodaが最も使われるOTAとされています。一方で台湾では同調査でBooking.comの利用率が72%と最も高く、Agodaと並んで主要チャネルとなっています(※1)。Agodaはシンガポール本社のアジア特化型OTAで、現地言語・決済手段への対応から東アジア圏で広く使われており、沖縄の主力市場を攻略する上では主要チャネルの一つと考えられます。

中国本土:Trip.comが事実上の必須チャネル
中国本土ではグレートファイアウォール(金盾)による通信規制があり、Booking.comやAgoda、Expediaといった海外OTAは中国国内から安定して利用しづらい環境にあります。一方、Trip.com Groupは中国国内向けに「携程(Ctrip)」ブランドを展開しており、2025年、同グループはグローバルパートナーに対し総額1,600億米ドル超の取引機会を創出。同社の国際OTAプラットフォームにおける総予約件数は前年比60%増加し、中国インバウンド旅行者数も前年比約100%増という著しい伸びを記録しています(※2)。また、AlipayやWeChat Payなど中国国内の主要決済手段にも対応しているため、中国本土客の取り込みにはTrip.com(携程)への掲載が事実上の必須条件となります。

アメリカ:Expediaがお膝元
沖縄では米軍関係者・観光客を含むアメリカ市場も無視できません。Expediaは本社をアメリカ・シアトルに置く北米最大級のOTAで、取扱高の6割超を米州地域が占めるなど北米市場に特に強い傾向があります(Expedia Group公表資料)。なお、Booking.comを擁するBooking Holdingsは、売上規模・グローバルシェアともにExpedia Groupを大きく上回っており、特に欧州では圧倒的な存在感を持ちます。一方、米国市場ではExpedia Groupがブランド認知・シェアともに優位に立っています。米軍関係者や米国人富裕層を狙うリゾートホテルにとっては、Expediaを軸にBooking.comも併せて販売することが望ましいといえます。

(※1)出典:2023年6月時点の台湾におけるオンライン旅行代理店の利用状況
(※2)出典: 「旅行・観光産業は世界GDPの10%」 Trip.comグループが上海でグローバル会議、AI戦略とイノベーション表彰を発表,観光経済新聞, 2026年6月

2-2  沖縄の宿が取るべき戦略

「とりあえずBooking.comとExpediaに載せておけばOK」という時代は終わりました。沖縄の場合、台湾・韓国比率が高い宿はAgoda中国客を取りたいならTrip.com(携程)米軍・欧米客にはExpedia欧州客や複数国籍をまとめて拾いたいならBooking.com、というように自施設の客層と各OTAの強い市場をマッチさせることが重要です。
自施設のデータを国別に分析し、「誰に来てほしいか」「実際に来ているのは誰か」を踏まえてOTAポートフォリオを組み直す——これが2026年の沖縄インバウンド攻略のカギになります。

次に、沖縄県への訪問シェアが高い韓国・台湾からの観光客に対する集客戦略について解説します。

【3】韓国・台湾は「超リピーター化」— 連泊化・客単価アップを見据えたプラン設計

沖縄観光の年間データが、ようやく「コロナ前超え」を明確にしました。2025年度の入域観光客数は1,093万5,800人と、コロナ前のピークだった2018年度(1,000万4,300人)を約93万人上回り、暦年・年度ともに史上最多を更新しています(※3)。2018年度比で93万1,500人(9.3%)の増加です。注目すべきは外国人観光客の構成で、全国とは異なる「台湾・韓国2強」の超リピーター市場が形づくられている点といえます。

3-1  沖縄インバウンドの「台湾・韓国2強」構造

2025年度において、全国の訪日市場は韓国(945万人)が1位、中国(909万人)が2位、台湾(676万人)が3位(※4)となっていますが、沖縄では構造が異なります。沖縄県が発表した2025年(暦年)の国籍別実績によりますと、外国人観光客283万5,400人のうち、台湾が前年比31%増の112万2,000人で全体の39.6%を占め、単独で最多となりました。一方、中国本土は42万人にとどまり、台湾・韓国を中心とした近距離アジアが沖縄インバウンドを牽引する構造が鮮明になっています。(※5)月次でみても、2025年5月時点で台湾約88,500人、韓国約55,200人がこの2か国だけで外国人観光客の約6割を占めています。また、秋の大型連休(10月)の海外客内訳も台湾48%、韓国31%、香港14%、中国6%と、台湾・韓国だけで約8割に達しました。

※この表は令和7年(2025)5月入域観光客数概況(確定版)のデータを基に作成したものです。

3-2  超リピーター市場としての沖縄

台湾・韓国は全国的にも訪日客の8割超がリピーターという「超リピーター市場」であり、訪日は「旅行」というより「国内旅行に近いルーティン」として定着しています。沖縄はその超リピーター層が「東京・大阪以外の次の選択肢」として向かう代表的な地方デスティネーションとなっています。消費の中身も「買う」から「過ごす」へ移行してきました。本島の那覇・恩納村にとどまらず、石垣・宮古など離島でのマリンアクティビティ、琉球文化体験、ローカルグルメへの関心が高まっています。これはホテルにとって「客単価を上げる余地」と同義です。連泊加算、体験セット、ダイニング・スパとのパッケージを、「何をして過ごすか」を軸に設計し直す余地があります。

3-3 ホテルが今設計すべき「リピーター採算」

ここで重要なのは、ホテル側がやるべきことと、外部に任せるべきことの線引きです。観光プランそのものを自社で組み立て始めると現場負担が膨らみ、本業のホスピタリティが薄くなってしまいます。ホテルの打ち手は、本業である「プラン設計」と「連泊化」に絞るのが現実的です。

第一に、【台湾・韓国リピーター向けの連泊プラン設計】です。初訪者向けの1〜2泊「首里城周遊付き」とは別に、3泊以上を前提とした連泊専用プランを用意します。具体的には、連泊割引(3泊目以降の単価低減)、滞在中の朝食・ディナー・スパの組み合わせ、館内のラウンジ・プール利用特典など、「何泊しても飽きない」設計に振り切ります。プラン名・写真・条件は、台湾華語・韓国語で会員向けメール・OTA上に明示することをお勧めします。

第二に、【既存OTA・予約システムの多言語機能を最大活用】することです。多言語SNSを自社運用するのは負担が大きいといえます。Booking.com、Agoda、Trip.comなど、台湾・韓国リピーターが使う主要OTAは、多言語UIと再訪客向けプロモ機能を備えています。自社サイト改修より前に、これらOTA上の多言語ページ整備・リピーター価格設定・口コミ返信(最低限の翻訳対応)から手を付ける方が、投資対効果は高くなります。

台湾・韓国の超リピーター層を「一泊客」から「連泊客」に転換できるかどうか。それが、証明された「今、沖縄に入っている需要」の中で、ホテル間の勝負を分けることになります。

(※3)出典:日本経済新聞「沖縄県、2025年度の観光客数1093万人 過去最高」(2026年4月)
(※4)出典:日本政府観光局(JNTO) による日本の観光統計データ
(※5)出典:琉球新報「沖縄への海外観光客、台湾が最多112万人 25年、中国本土は42万人」(2026年3月)

【4】おわりに

ここまで見てきたように、沖縄のインバウンドはコロナ禍前の水準をほぼ取り戻し、新規就航・増便の続く2026年は、さらなる伸びが見込まれるタイミングとなります。しかしその需要は、決して均等に分布しているわけではありません。台湾・韓国・香港・中国の4市場で来訪者の8割以上を占め、しかもその一人ひとりが使うOTAも、求める体験も、市場ごとに大きく異なります。
だからこそ、「とりあえず大手OTAに載せておく」「とにかく媒体数を増やす」といった発想では、限られた労力もコストも分散してしまいます。台湾・韓国・香港にはAgoda、中国本土にはTrip.com、欧米観光客にはExpediaというように、自施設の客層と各OTAが強い市場をマッチさせること。これが集客効率を大きく左右する第一歩となります。

さらに沖縄ならではの難しさは、主力である台湾・韓国が「沖縄を訪れたことのあるリピーター」で占められていることです。リピーターにとって初回向けの定番プランは魅力が薄れていると考えられます。離島や本島各エリアを組み合わせた周遊提案、季節ごとに切り替わる体験プログラム、SNSでイベント・プランの情報発信などの「プランの強化」が、これからの宿選びで「選ばれる理由」になるはずです。

弊社では、OTA運営の改善を通じて、施設様ごとの魅力をより効果的に伝える販売体制づくりをお手伝いしています。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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